恋時雨~恋、ときどき、涙~

将来の進路すら検討もつかなくて、焦りをひた隠しながら短大に通っている。


それよりも大きな不安が生まれたのは、順也の決意を知ってからだ。


特売品のトマトをカゴに入れて、わたしは立ちすくんだ。


そういえば、わたし、健ちゃんの親に会ったことがない。


別に、結婚したいとかそういうのじゃない。


だけど。


健ちゃんは親に、わたしのことを話したりしているものなんだろうか。


息子の彼女が聴覚障害者だと知ったら、どう思うだろう。


順也は、反対されてると言っていた。


わたしが反対されないわけがないんじゃないだろうか。


それで、同棲してるなんて分かったら、反対どころじゃないかもしれない。


そもそも、健ちゃんは親に言い出せないんじゃないか。


彼女が聴覚障害者だなんて、言いにくいに決まっている。


カゴに入れたトマトを棚に戻す。


ため息すら出なかった。


わたしは、現実という壁に体当たりしてしまったのだ。


健ちゃんはまだ、二十歳だ。


いや、違う。


もう、二十歳なのだ。


健ちゃんは、わたしとの未来を、どんなふうに考えているんだろう。


考え出すと、キリがなかった。


健ちゃんに聞く勇気が、わたしにはない。


不安で怖くて、どうすればいいのか分からなかった。


そんな不安が膨らむ中、わたしたちの恋は一気に加速した。