恋時雨~恋、ときどき、涙~

「ほら。最近、幸のこととかあって、どたばたしてたから。健太さんの話、きかないなあと思って」


うまくいってるならいいんだけど、と静奈が微笑む。


〈普通〉


「普通?」


わたしは頷いた。


〈ケンカして、仲直りして、普通。特に変わりない〉


「ケンカしてるんだ」


相変わらずだね、と順也が可笑しそうに吹き出した。


本当に小さな事で口論になり、やがて膨らみ、ケンカに発展する。


でも、気づけば自然に歩み寄り、いつの間にか仲直りして笑っていたりする。


特別嬉しいこともないし、特別悲しいこともない。


普通。


これが幸せなのかもしれない。


そうだというのなら、このままがいい。


平凡でささやかな幸せな毎日が、ずっと続けばいい。


それ以上のことを、わたしは何も望まない。


少しでも欲を出せばきっと、崩れてしまうような気がする。


きっと、崩れる。


この「普通」が。


夕方、ふたりと別れたわたしは、近所のスーパーで夕飯の買い物をしていた。


いつもなら、けっこう早く献立がひらめくのに、今日は全然だめだ。


将来の夢に向かっている、中島くん。


懸命に、前を向こうとしている、幸。


静奈にプロポーズをしようとしている、順也。


順也を支えようと輝く、静奈。


春になって嬉しいこと続きのはずなのに、わたしは不安でいっぱいだった。


今の幸せが続けばそれだけで十分だと思う反面。