恋時雨~恋、ときどき、涙~

「今日、しーの両親と会うことになってるんだ」


家に来るんだ、そう言って、順也は肩をすくめた。


とても、不安そうに。


「ぼくの足が、こんなのじゃなかったら」


順也は膝掛けの上から、両足をさすった。


「こんなに緊張することもなかったんだろうね」


〈順也〉


手話の途中で、わたしは順也の顔を扇いだ。


〈どういうこと?〉


「ああ」


順也が小さく笑った。


「しーの両親は、ぼくとしーの交際を、反対してる」


当たり前だよね、と笑った順也が無理して笑っているのが、痛いほど分かる。


車椅子じゃなくて普通に歩けるのなら、反対されなくても済んだのかもしれない。


でも、しーの両親の気持ちも、痛いくらい分かるんだ。


大切な娘の交際相手が下半身不随で、車椅子だなんてさ。


反対しない親は、たぶん、居ないよ。


ぼくだって、自分の娘が車椅子の人と交際していると知ったら、反対すると思う。


「分かるんだ。おそらく」


今日、ぼくは言われるんだろうね、そう言って、順也はゆっくりと両手を動かした。


「諦めて欲しい。しーと別れて下さいって」


それを分かっているのに、だから、ぼくは怖くてたまらないんだと思う。


そう言って、順也は満開の桜を見上げた。


順也の優しい横顔を見つめていると、順也が微笑んだ。


「でもね、真央」