恋時雨~恋、ときどき、涙~

昨日の幸はどこに行ったの? とでも言いたげに。


手話が分からない中島くんに、わたしは言った。


〈幸は、みんなのお星さまだよ〉


「えっ……何? 真央、なんて言ってるの?」


と静奈に聞く中島くんに背を向けて、わたしは駆け出した。


春のやわらかい匂いがする。


なんて、いい天気。


わたしは幸を追い掛けながら、おそらく明日へ伸びているそれを見上げて笑った。


あ。


ひこうきぐも。

















桜花爛漫。


近所の公園の桜が満開になったのは、それから一週間後の暖かい土曜日のことだった。


幸は少しずつ少しずつ、元気を取り戻し始めている。


土曜日は、午前で講義が終わる。


幸は冬から始めていたファミレスのアルバイトで、わたしと静奈は仕事が休みの順也を誘って、公園に花見見物に繰り出した。


この街でいちばんおおきな公園は、花見客でごったがえしていた。


もう、切ない冬は終わりを告げて、春が訪れ、穏やかな日々が続いていくんだとわたしは思っていた。


そう信じて疑わなかった。