恋時雨~恋、ときどき、涙~

幸がこぼれていってしまわないようにしっかり抱き締めながら、窓ガラス越しに空を見つめた。


ガラスにひと粒、またひと粒と水滴が弾ける。


雨……。


キャンドルライトの灯りだけの、仄暗い部屋。


散乱した、愛が詰まった200枚の手紙。


カーペットに投げ出された、ふたつの刃物。


震える小さな友達。


幸せになって欲しい。


切ない色の雨の粒がガラスを伝い落ちる様を見つめながら、わたしは幸を強く抱き締めた。


幸。


幸せになって。


神様。


もう、じゅうぶんです。


もう、これ以上の悲しみを幸に降らせないで下さい。


















泣き疲れてふらふらの幸をベッドに寝かせて、わたしは健ちゃんのところへ向かった。


アパートの外は雨だった。


運転席のガラスを2回たたくと、健ちゃんがハッとしてウィンドウを開けた。


「なにしてるんけ。雨に濡れる。乗れ」


健ちゃんに、わたしは首を降った。


「乗らないのか?」


わたしは頷いた。


〈今日は帰らない。幸のそばにいてあげたい〉