恋時雨~恋、ときどき、涙~

生きとるんか、死んどるんか、もう、自分でもよう分からん。


振り絞るように手話をして、幸は力尽きた旅人のように芝生にぺたりと座り込んだ。


中島くんと静奈が、支えるように幸の肩に手を添えた。


「あかん。うち、もう疲れてしもた」


左手首を右手で包み込むように掴みながら、幸は泣いた。


「幸」


と中島くんが穏やかに話しかけた。


「一度、病院に行こう」


幸は首を振って抵抗した。


「行かんでも平気や。こんな傷、何もせんでもそのうち治るわ」


「手首の傷のことじゃなくて。幸は、心の病気だよ」


その瞬間に、幸が豹変した。


「離してくれん?」


中島くんと静奈を乱暴に振り切って、立ち上がった。


「病気てなんや! うちはそんなんやないわ! 余計なお世話や!」


静奈が芝生に尻餅をついて、怯えるように幸を見つめていた。


幸は息をあらげて芝生に落ちていたバッグを拾い上げて、中島くんを叩いた。


「人を病人扱いせんといて! うちは、正常や!」


そう叫んで、幸は駆け出した。


幸を、中島くんが追い掛ける。