恋時雨~恋、ときどき、涙~

その傷痕の数だけ幸が苦しんでいたのかと思うと、見ていられなかった。


無数の切り傷が、痛々しくてたまらない。


たまらない。


「夜になるとな、不安で怖くて、どうしてもやってまうんよ。リストカット」


リスト……カット。


心臓がきれいに真っ二つになった気がした。


幸が手首をジャケットに隠して、ごめんな、と手話をした。


「せやけどな、どうにもやってまうんよ。夜になってひとりになると、うち、自分が生きとんのか、死んどるんか、よう分からんようになるんよ」


せやから、手首切って確かめんねん。


痛い。


血が出た。


ああ、生きとるんや。


「そこでハッとして、涙が出とる。血を見ると安心すんねん」


幸が何を言っているのか、理解できなかった。


わたしは、ストレートな質問をぶつけた。


〈幸は……死にたいの? だから、手首を?〉


少しの沈黙が続いたあと、幸は「ちゃうわ」と首を横に振った。


「死にたいとは思うとらん。ただ、確かめたいだけや」


〈確かめたい?〉


「せや。生きとるんか、死んどるんか。確かめたくなんねん」