恋時雨~恋、ときどき、涙~

草を引っこ抜くたびに土の香りがして、そして、幸の笑顔と元気な手話ばかりが脳裏をかすめていった。


『うちは真央の味方やで! 元気出し!』


つぎつぎ。


『真央、泣きたいときは泣かなあかんで! 爆発してまうやんか』


つぎつぎ。


『真央とおったら、毎日がおもろうてかなわんわ!』


つぎつぎ、つぎつぎ。


こんこんと湧き出る天然水のように、止めどなく、幸の笑顔が溢れてくる。


その笑顔はいつだって限り無く透明で、いつも、鮮烈だった。


幸はいつだって元気で、明るくて。


何があっても毅然としていて、さりげなく、わたしの背中を押してくれた。


静奈の他は、幸だけだった。


わたしなんかのために手話を覚えてくれた女の子も、わたしの障害を特別扱いしない女の子も。


わたしは、幸を、強い女の子だとばかり思っていた。


勝手に、強いと決めつけていた。


足が震える。


幸が悲しい微笑みを浮かべながら、わたしに手首を見せてきた。


「バレたらしゃないな。うち、やめられへんねん」


怖くなった。


幸の手首から、とっさに目を反らした。