恋時雨~恋、ときどき、涙~

わたしは、ついさっきまでとても機嫌が良かった。


でも、今はひどく悪い。


わたしの家に送ってもらっている途中、静奈のスマホに思いがけない一報が入ったからだ。


その一報さえなければ、わたしは今も機嫌良くシートにもたれていたのだろう。


今、車が向かっているのは、地元でいちばん人気がある美岬海岸だ。


美しい夕陽が見れる、と少し有名だ。


その夕陽を見ようと、遠方から訪れる人も珍しくない。


静奈は、そこに、わたしを連れて行こうとしているのだ。


勿論、夕陽を見るためではない。


静奈の彼氏の友人たちが、美岬海岸でバーベキューをしているのだと言う。


静奈の肩を叩いて、わたしは乱暴に両手を動かした。


〈とにかく、行きたくないの!〉


それでも、静奈は諦めなかった。


無邪気に微笑んでいる。