恋時雨~恋、ときどき、涙~

そう手話をして、健ちゃんは微笑んだ。


それなら、とわたしは思った。


わたしと健ちゃんが出逢って、こうしているのも運命だというのならば、どんな未来が待っているのだろうか。


じゃあ、と手話をしようとしたわたしを遮って、健ちゃんが両手を動かした。


「おれは、もう、何度も限界にぶつかったんけ」


この先もずっと、何があっても一緒に居たいと思える人に恋をした時。


その人が、耳が聴こえないと知った時。


それでもその人と話したくて、必死に手話を勉強した時。


口では簡単に言えるのに、うまく伝えられなかった時。


その人を支えたいのに、自分の無力さを痛感した時。


「いつも、限界にぶつかったんけ。でも、気付いたらそんな限界なんて、乗り越えてた」


健ちゃんの人差し指が、わたしをさした。


「真央が何より大切だから。限界なんて、知らないうちに乗り越えてたんけなあ」


涙が溢れる。


目の前が、じんわりと涙で滲んでいく。


ひと粒の滴が頬を伝った時、わたしはようやく気付いた。


わたしも、越えていたことに。


わたしも、幾つかの限界を知らず知らずのうちに越えていたじゃないか。