恋時雨~恋、ときどき、涙~

〈わたしたちに、いつか、限界はやってくるのかな〉


指先が震える。


優しく射し込んでいた月明かりが、一瞬、姿を眩ました。


夜空に輝いていた星も下弦の月も、雲に遮られている。


次第に雲がはけていくと、再び、優しい月明かりがフローリングに射し込んだ。


両手が震える。


健ちゃんが肩をすくめた。


「亘に言われたこと、気にしてるのか」


違うと言ったら、嘘になる。


でも、それだけじゃない。


耳が聴こえないわたしと、健康な健ちゃんとでは、住む世界が違い過ぎる。


亘さんが言っていた。


でも、それだけじゃない。


果江さんだって、言っていた。


いつか、必ず、限界が来る、と。


〈わたしと、健ちゃんに、いつか限界は来るのかな〉


そう手話をして、わたしはうつ向いた。


次に顔を上げた時、健ちゃんは窓辺に立っていた。


月明かりに照らされた健ちゃんの後ろ姿は、優しいシルエットになっていた。


健ちゃんが振り向く。


月明かりを背に、健ちゃんがわたしを指差した。


「真央は、どうなんだよ。限界、来ると思う?」


わたしは肩をすくめた。


〈分からない〉