恋時雨~恋、ときどき、涙~

そう思い、ドアノブに手を掛けた時、背中に何かが当たった。


振り向くと、健ちゃんが体を起こして笑っていた。


〈起こしちゃった? ごめん〉


両手を合わせ、足元に転がっていたセブンスターを拾うと、健ちゃんが布団から出てわたしの前に立った。


月明かりが、健ちゃんの顔をぼんやりと照らしている。


切なさが入り交じっている、でも、優しい目を健ちゃんはしていた。


「いや。起きてた。なんか、眠れなくて」


完全に寝不足だんけ、と健ちゃんは微笑んだ。


「真央こそ、どうした? 眠れない?」


わたしが頷くと、健ちゃんはわたしからセブンスターを取り、手のひらで頬に触れてきた。


「ごめんな、真央」


と健ちゃんの唇が言った。


〈なに?〉


「不安にさせてばっかで、ごめん。でも、大丈夫だんけな。果江はもう過去だから」


違う。


わたしは首を振った。


「果江もだんけ。果江の中でも、おれはもう過去だんけ。今は真央だけだから」


不安に思う必要ねんけな、と健ちゃんは両手を動かしたけれど、わたしは頷かなかった。


違う。


そういうことが言いたかったわけじゃない。