恋時雨~恋、ときどき、涙~

よしよし。


しばらく頭を撫でていると、突然、亘さんが吹き出して笑った。


とてつもなく、可笑しそうに。


「まいったなあ」


なんて、大きな口を開けて亘さんは笑った。


わたしは呆気にとられてしまった。


おそらく、今、わたしは間抜けな顔をしているに違いない。


「真央ちゃんて、おかしな子だね」


そう言って、亘さんは人懐こく笑った。


「おれ、女の子に頭を撫でてもらったの、久しぶりかも。たぶん、母さん以来だよ」


亘さんが本当に可笑しそうに笑うから、つい、わたしも小さく吹き出して笑った。


亘さんの端正な顔立ちが、くしゃくしゃだ。


「でも、真央ちゃんの手は、とても優しいんだね」


そう言って、亘さんはわたしの両手を包み込むように握った。


大きくて、温かい手を亘さんはしていた。


わたしは亘さんの唇をじっと見つめた。


「きっと、みんな、この手に救われるんだね。健ちゃんもそうなんだと思うよ」


え、と思わず顔を近付けると、亘さんはゆっくり唇を動かした。


「耳が聴こえなくても、関係ないんだね。この両手に、みんなが救われるんだね。果江も、健ちゃんも、救われたんだ」