恋時雨~恋、ときどき、涙~

涙を流しながら何度も何度も繰り返す亘さんを見ていると、胸が締め付けられた。


わたしは、何もしていないのに。


こんなとき、声を出せたら、どんなにいいだろうか。


言葉で思いを伝えることができたら、どんなにいいのだろうか。


メモ帳に文字を綴るのではなく、手話でもなく、言葉にできたらどんなに……。


今のわたしにできることなんて、こんなことくらいだった。


亘さん、泣かないで。


わたしは背伸びをして、亘さんの髪の毛を弾くように撫でた。


まるで、泣きじゃくる子供をあやすかのように。


わたしが泣くと、いつもお母さんがしてくれたように。


よしよし。


亘さん、泣かないで。


よしよし。


初めは、この人が苦手だった。


少し冷たい感じがして、わたしに冷たいような気がして、冷血だとさえ感じた。


けれど、今こうして温かい涙を、人目もはばからず流す亘さんが、本当の姿の亘さんなのではないだろうか。


今なら、なんだか分かる気がする。


亘さんもまた、ただ、必死だっただけだ。


大切なものを、ただ、守りたい一心で必死だっただけだ。