恋時雨~恋、ときどき、涙~

【果江さんが恋をしているように
 わたしも恋をしています】


果江さんが、隆司さんに恋をしているように、わたしも、健ちゃんに恋をしているから。


わたしは、メモ帳にボールペンを走らせた。


ゆっくり、丁寧に。


【不思議ですね
 恋ってとても幸せなことのはずなのに
 どうして
 こんなに苦しくて
 切ないのか】


「……さい」


メモ帳を見たあと、果江さんはうつむきながら唇を動かした。


けれど、その角度からはうまく読み取れなくて、わたしは果江さんの肩をそっと叩いた。


「ごめんなさい」


大きな口で、果江さんは言った。


「ごめんなさい! ごめんなさい!」


大きな瞳から、大粒の涙がどんどん、どんどん、溢れている。


「ごめんなさい!」


果江さんが、泣いていた。


どうすることもできず、ただおろおろしているわたしの手をとり、果江さんは大きな口で言った。


「うらやましかった」


そう言って、わたしの顔を指差した。


「あなたを信じている、健ちゃんを。健ちゃんを信じている、あなたのことも」


手をほどいてメモ帳を手にしようとすると、それを遮るように果江さんはわたしの手を掴んだ。