恋時雨~恋、ときどき、涙~

メモ帳を見た果江さんは、突然、狂ったように泣き出してしまった。


尋常ではない泣き方に、わたしは戸惑った。


そっと、果江さんの背中に手を添えようとした時だった。


「ごめんなさい!」


大きな口を開けて、果江さんが、とっさに引っ込めたわたしの手を掴んできた。


思わず、息を呑んだ。


「どうして? 私、あなたに酷いことばかりしたのに……健ちゃんを困らせて、亘を呆れさせて、あなたを傷付けてしまったのに」


異様なほど興奮して泣き叫ぶ果江さんをなだめるように、わたしは笑った。


ちょっと待って、とジェスチャーし、わたしはメモ帳を手にした。


【果江さんの気持ちが分かるからです】


わたしがこの耳と闘ってきたように。


病気と闘ってきた果江さんの辛さが。


分かるから。


本当はしたいことも出来なくて、我慢ばかりする惨めさ。


大切な人を、無意識のうちに苦労させていることの悔しさ。


結局、何もできない不甲斐なさ、情けなさ。


葛藤。


【わたしも同じ
 果江さんと同じです】


「同じ? 私と、あなたが?」


わたしは迷うことなく頷いた。