恋時雨~恋、ときどき、涙~

「怖い。怖いに決まってるじゃない。今さら伝えても、もう遅いって言われる、きっと」


〈そんなことない!〉


わたしが両手を動かすと、難しい顔をして果江さんは首を傾げた。


「え? なに?」


ああ、じれったい。


わたしは、自分にいらいらした。


どうして、わたしはメモ帳とボールペンがないと、誰かに想いを伝えることすらできないのだろう。


果江さんに伝えたいことが、胸の奥から奥からどんどん溢れてくるのに。


この気持ちを全部メモ帳に綴っていたら、夜が明けてしまいそうだ。


その時、わたしの脳裏をよぎったのは、幸の手話だった。


真央の気持ちひとつやで。


明日はどうなってるか分からん。


真央の気持ちひとつで、明日が決まるんやで。


ぼくを信じて


そう綴った想い出のポラロイド写真を、果江さんに渡した隆司さん。


ぼくを信じて


その一言に、どれほどの思いの丈が詰まっているのだろうか。


わたしはメモ帳にボールペンを走らせた。


【 果江さんの気持ちひとつです
 明日はどうなってるか分からない
 果江さんの気持ちひとつで
 明日が決まります】