恋時雨~恋、ときどき、涙~

その文字を、愛しそうにゆっくりと、果江さんの指先がなぞっていった。


「……」


果江さんの唇が動いた。


でも、読み取れなかった。


それが、日本語ではないと気付いたのは、果江さんの頬から一粒の涙が落ちた瞬間だった。


「プリーズ……」








Dear Kae

Please believe me

Ryuji







丁寧な筆記体で、ポラロイド写真の裏面にはそう綴られていた。


親愛なる 果江

僕を 信じて

隆司







「飛行機の中で、これを見付けた時」


そう言いながら、果江さんは綴りを指差した。


「生きてきた中で、いちばん後悔したわ。飛行機に乗ってしまったこと。アメリカを逃げ出したこと」


どうして、彼を信じる事ができなかったんだろう。


そう言って、果江さんは泣き崩れてしまった。


どうして、人間は初心を忘れてしまうのだろう。


今ばかりに捕らわれて、あの頃を忘れてしまうのだろう。


過去の大切なものを、平気で忘れてしまうのだろう。


わたしは、メモ帳にボールペンを走らせた。