恋時雨~恋、ときどき、涙~

「私はケンカになる度に、健ちゃんの名前を出してばかりだった」


隆司は大人で、やっぱり、私は子供だったのね、そう言って果江さんは肩をすくめて苦笑いした。


「その時、言われたの」


『僕は、健ちゃんじゃない!』


「果江のことがよく分からなくなった。もう、別れようって」


ついに、果江さんは何かを吐き出すように、泣き出してしまった。


とても、辛そうに。


苦しそうに、顔を歪めながら。


わたしは胸が苦しかった。


果江さんが、わたしの手を握り締めた。


「気付いたら、亘にエアメールを書いてた。一刻も早く、アメリカを出たかった」


心臓なんて、どうなってもいい。


死んだって構わない。


だから、とにかく1日でも早く、アメリカから出たかった。


辛くて、切なくて、苦しくて。


だから、あるだけのお金をかき集めて、飛行機のチケットを予約した。


そして、親にも内緒で空港へ向かおうとして家を出た時、隆司さんが追い掛けてきたらしい。


夜勤明けだったんだと思う、髪もぼさぼさで疲れた顔をしていたから、と果江さんは言った。


ボストンバックを手にしている事には一切触れず、隆司さんは言ったらしい。


『やり直そう。果江』