恋時雨~恋、ときどき、涙~

もう、終わりにしよう。


健ちゃんに、幸せになって欲しいから。


もう、日本へは戻らない。


もう、亘を自由にしてあげたいから。


だから、一通のエアメールを最後に、果江さんは住所も電話番号も変えた。


果江さんの身体が回復していくにつれ、それに比例するように隆司さんは出世し、仕事が忙しくなった。


それが発端となり、ふたりはすれ違ってケンカが絶えなくなった。


そんな時、再び、果江さんの病状は急変したのだ。


また、手術が必要になってしまった。


「もう、絶望だった。私は結局、幸せになれないんだって」


その手術を受けろ、受けない、のケンカになった際に、果江さんは隆司さんに言った。


『私はこんなに不安なのに、隆司は仕事ばかりなのね』


『側にいてもくれないのに、手術を受けろだなんて。私の気持ちを何も分かってくれない』


『どんな時も、健ちゃんは側に居てくれたのに! 日本に帰りたい!』


「隆司は、付き合ってから一度も、医大生の時の彼女の名前、口にしなかったのに」


と果江さんは肩をすくめた。