恋時雨~恋、ときどき、涙~

果江さんは、自ら孤独を作り出してしまったのだ。


そう、思った。


孤独の殻を一枚ずつ脱ぎ捨てるように、果江さんはアメリカでの生活を話し始めた。


食べ物も、習慣も、言葉も、日本とはまるで違う。


待っても待ってもドナーは現れず、ただ空洞のような日々を送ったこと。


そんな不安と孤独を両手に抱きかかえた日々を変えてくれたのは、担当になった医師だったこと。


「メモ帳とボールペンかして」


と果江さんはわたしからメモ帳をとり、ボールペンを走らせた。


【小笠原 隆司】


「おがさわら、りゅうじ」


メモ帳を指差しながら、果江さんは言った。


「彼の、名前よ」


同じ日本人で、きさくで、打ち解けるまでそう時間はかからなかったそうだ。


「お、が、さ、わ、ら、りゅ、う、じ」


分かる? 、と果江さんはその人の名前を、まるでそっと抱きしめるように口にした。


わたしがこくりとうなずくと、果江さんは枕元の鞄からパスポートをとりだし、開いてわたしに差し出してきた。


「見て」


パスポートにはさまれてあったそれは、一枚のポラロイド写真だった。