恋時雨~恋、ときどき、涙~

「だって、いつも助けてもらってばかりで、うんざりしてたんだもの」


と本当にうんざりしたような表情をうかべたあと、果江さんはふんわりと微笑んだ。


「亘はね、小さいころから、わたしに付きっきりだったのよ」


保育園。


小学校、中学校、それから高校も。


笑う時も、泣く時も、いつも手を伸ばせば届く距離に亘は居てくれた。


いつも、助けてもらってばかりだった。


「だから、板が倒れてきた時、死んでもいいから亘を助けようって、思ったの」


わたしはハッとした。


同じかもしれない。


わたしと果江さんは、似ているのかもしれない。


そう思った。


「あなたも守られて来た側だから、分かるでしょ?」


と果江さんは笑った。


うん、とうなずいてみせた時、果江さんはその笑顔を曇らせた。


「でも、結局は亘を困らせてる。この傷のせいで、亘は……」


言葉を詰まらせる果江さんを、もう敵だとは思えなくなっていた。


「結局、この傷が、亘を縛り付けてるの」


果江さんは唇を噛んで、両手を握りしめた。


震える果江さんの両手からは、悔しさと優しさが同時に溢れ出ていた。