恋時雨~恋、ときどき、涙~

そして、ドアを2回だけノックした。


ややあってドアが開き、


「真央ちゃん。来てくれたんだ」


と顔を覗かせたのは、スーツ姿の亘さんだった。


わたしは軽く会釈をした。


顔を上げると、亘さんは「ありがとう」と微笑んだ。


中に入ると、そこはひとり部屋だった。


わたしと目が合ったとたんに、果江さんはつんとそっぽを向いてしまった。


わたしの肩を叩き、亘さんは「ごめんね」と苦笑いをした。


そして、果江さんが上半身を起こしているベッドの横に、パイプ椅子を用意してくれた。


「座って。どうぞ」


わたしは鞄からメモ帳とボールペンを取り出した。


【ありがとう】


メモ帳を見せると、亘さんはにっこり微笑んで、


「真央ちゃんがここに来てること、健ちゃんに連絡して来るよ」


とスマホを片手に病室を出て行ってしまった。


パイプ椅子に腰を降ろし、わたしはいつになく緊張していることに気付いた。


どうしよう。


果江さんがこちらを向いてくれる気配はなく、相変わらずつんとして窓の外に視線を投げたままだ。


その真横で、わたしはメモ帳にボールペンを走らせた。