恋時雨~恋、ときどき、涙~

「ひっどい顔やったわ。この世のものとは思えんくらい、ブスやったで」


と幸は人差し指で鼻を持ち上げて、ブー、とブタの真似をした。


〈ひどい!〉


わたしも負けじとブタの真似をし返すと、


「何やて! わたしはブタちゃうわ」


とシャープな頬を、焼きたてのお餅のようにぷっくりと膨らませた。


一瞬睨み合って、でも、すぐにわたしと幸は同時に吹き出して笑った。


「なんや。んな深刻な内容のラインやったんかいな」


うーん、どうかな……と肩をすくめたわたしに、幸はゆっくりと両手を動かした。


「言うてみい。代わる事はできんけど、話、きいてやることくらい、朝飯前やで」


幸の手話には、不思議な力があるんじゃないかと思う瞬間がある。


幸の手話は、わたしに勇気をくれる。


〈あのね……〉


と言いかけた時、わたしは手話をやめてしまった。


何から何を、どう説明すればいいのか分からず、わたしは亘さんから送信されてきたメールを幸に見せることにした。


「か、え、って誰やの?」


ゆっくり唇を動かしながら、幸は画面の「果江」というゴシック体の名前を指差した。