恋時雨~恋、ときどき、涙~

わたしは想像した。


大きな板が、高校生の亘さんに降りかかってくる。


亘さんを守ろうとして、そこに飛び込んでいく果江さんの背中を。


これは、わたしの勝手な憶測に過ぎない。


けれど、その瞬間、果江さんはすっかり忘れていたのではないのだろうか。


大切な手術が控えてあったこと、何よりも、自分の心臓が人よりも弱いことを。


それくらい、果江さんは夢中だったんじゃないだろうか。


大切な人に降りかかってくる災いに、躊躇なく飛び込んで行く果江さんを、わたしは想像の中で見たような気がした。


だからこそ、わたしは胸が苦しくなった。


苦しくて、切なくて、痛かった。


健ちゃんの肩越しに、こっそりと亘さんを見つめた。


難しい表情の静奈に、何かを説明している。


亘さん。


一見、冷たくも見れる瞳の奥に、どれほどの切なさを隠している人なのだろうか。


「真央」


健ちゃんが、わたしの顔を扇ぐ。


「亘のこと、嫌いにならないで欲しいんけ。亘、根はいい男だんけな」


やや間を置いて、わたしは頷いた。


「さっき、真央に言ってしまったこと、本気じゃないと思うんけ。ぜったい後悔してると思うんけ」