恋時雨~恋、ときどき、涙~

「その時の出血と痛みのせいもあったんだろうな。果江、発作起こしてな」


と健ちゃんは胸もとを押さえるジェスチャーをした。


果江さんはそのまま病院に運ばれたらしい。


緊急の治療が行われ、果江さんの命には別状はなかった。


「でも」


と健ちゃんは、手のひらを返して難しい顔をした。


「そのせいで、文化祭の後に控えていた心臓の手術ができなくなったんけ」


傷の治療をしながら心臓の心臓をするだけの体力を、果江さんは持ち合わせていなかったのだ。


「その手術ってのが、アメリカからたまたま来日してた心臓外科の先生がしてくれることになってたんだけど」


〈けど?〉


「その怪我が完治して、果江の体力が戻る頃には、その先生帰国しなきゃいけなくて」


手術は中止。


でも、これ以上延ばすとなると、心臓移植が必要になる。


だから、結局、渡米して移植手術が必要になった。


そう手話をしたあと、健ちゃんの表情は一気に曇った。


「そのことを、亘は今でも引きずってるんけ」


なんとなくだけれど、分かったような気がした。


亘さんが、ここまで必死になって果江さんを守ろうとしている理由が。