恋時雨~恋、ときどき、涙~

それくらいしかできないのに、それで精一杯だった自分の不能さに腹が立った。


でも、ただ……。


〈わたしは、果江さんを助けたくて。でも、何もできなかった〉


「大丈夫。果江さんは大丈夫だよ」


救急車が到着するまでの間、わたしは果江さんを抱き締め続けた。


果江さん。


頑張れ。


それすら言葉にできない自分が、情けなくて悔しかった。


目の前で人が倒れて苦しんでいるのに。


わたしを亘さんと勘違いしてしまうほど、朦朧とした意識の中で果江さんは苦しんでいたのに。


わたしには救急車を呼ぶことも、外へ飛び出して通行人に「助けてください」と叫ぶことすらできなかった。


歩けない順也や、耳が聴こえず話すこともできないわたしがどうすることもできず、救急車には静奈が同行して行った。


18時前に、健ちゃんが帰ってきた。


順也から電話をもらった健ちゃんは、慌てて帰ってきたらしい。


部屋に上がることもなく、健ちゃんは作業着のままわたしと順也を外に連れ出した。


「亘には連絡してあるから。おれたちも急ぐんけ」


トランクに車椅子を乗せて、わたしと順也と健ちゃんは急いで病院へ向かった。