恋時雨~恋、ときどき、涙~

でも、このままじゃ……、そう手話をして、順也は素早く電話を掛け始めた。


救急車を呼んだらしい。


電話を切った順也は、すぐに果江さんのコートのボタンを外し、服を緩めた。


「真央、このまま、果江さんを抱えていて」


わたしはしっかりと頷いた。


そして、順也は静奈に指示を出した。


「しー。悪いけど、外で待機していて。救急車が来たら、この部屋まで誘導して欲しい」


「分かった」


この人が誰なのか、なぜ倒れているのか、全く何も知らされてすらいないのに、静奈は何も訊かずに慌てて外へ飛び出して行った。


順也が誰かに電話をかけている。


その横でずっと、わたしは果江さんを抱き抱えていた。


電話が終わると、順也は、果江さんごとわたしをそっと抱き締めてくれた。


わたしの背中を2回撫でたあと、順也は体を離した。


「真央、よくやったね」


頑張ったんだね、という順也の手話を見て、わたしは首を振った。


わたし、何も頑張ってなんかいない。


何もできなかった。


「よく、ぼくとしーに電話を掛けてきた。よくやった。だから、ぼくたちが早く駆け付けることができたんだよ」


悔しかった。