恋時雨~恋、ときどき、涙~

わたしが電話をかけるなんて初めてだったから、ふたりは何事かと慌てて、何かを察して大急ぎで来てくれたのだろう。


ふたりとも、雨に打たれてずぶ濡れだった。


まるでバケツの水を頭から豪快にかぶったように、ずぶ濡れだった。


果江さんを抱えたまま、わたしは両手を動かした。


〈助けて!〉


順也がハッとした顔をした。


〈果江さんが倒れた!〉


わたしが訴えると、順也は冷静な面持ちで車椅子から飛び降りた。


冷たい玄関を這いながら、順也はわたしの腕を掴んだ。


「真央、落ち着いて」


そう言って、わたしの肩を2回叩いたあと、順也は腕時計を見つめながら果江さんの手首に指で触れた。


順也の真後ろで、静奈は呆けたように立ち尽くしている。


静奈と目が合う。


「この人、誰?」


静奈の質問に答えている余裕が、わたしには無かった。


この人が誰なのか、わたしとどういう関係なのか、この人がなぜこの部屋にいるのか、なぜ倒れてしまったのか。


説明している余裕なんてない。


わたしは静奈から目を反らした。


順也に肩を叩かれてハッとした。


「大丈夫。脈がある。発作を起こしたんだ」