恋時雨~恋、ときどき、涙~

不気味な胸騒ぎがした。


果江さんのバッグから飛び出した無防備な物をそっと拾い上げ、わたしは恐る恐る玄関を覗いた。


足がすくんだ。


背筋にぞくりとしたものが這い上がる。


わたしは持っていた物を床に落として、玄関に走った。


果江さん!


良い予感はたいがい外れるけれど、嫌な予感はたいがい的中してしまう。


玄関で小さくうずくまっている果江さんを抱き起こした。


わたしの腕に、ずっしりとした重みがあった。


果江さんは額に汗を滲ませ、青白い顔を苦しそうに歪めて、わたしに体を預けてきた。


右手で、胸を強く押さえ付けている。


果江さんは激しく肩で呼吸を繰り返していた。


果江さんは心臓が苦しいんだ。


どうしよう。


きっと、発作に違いない。


どうしよう。


誰か……。


回りを見ても、誰もいない。


わたしと、苦しむ果江さんだけだ。


焦りばかりが空回りする。


その時、果江さんがわたしの腕を凄まじい力で握ってきた。


果江さんの唇が動く。


「わた……る」


果江さんの目はときおり白目になったりして、うつろだ。


朦朧とした意識の中で、わたしを亘さんと勘したのだろう。