恋時雨~恋、ときどき、涙~

リビングの窓から外を見下ろした。


人影はない。


今追い掛ければ、間に合うかもしれない。


あれからそう時間はたっていない。


傘を持って果江さんを追い掛けようと思い、カーテンを勢いよく閉めて駆け出した。


痛い!


そう感じた時には、目の前が揺らいでいた。


慌ててしまったせいでテーブルの角に足をぶつけて、転んでしまった。


その衝撃でテーブルからカップが転がり落ち、床で割れてしまっている。


床が水浸しだ。



あ、と思った時には遅かった。


やっちゃった。


慌てて破片を拾い集めキッチンへ運ぼうとリビングを出て、わたしはまたカップを床に落としてしまった。


愕然とした。


手の力が勝手に緩み、カップはするりと床に落ちた。


わたしは息を呑んだ。


心臓が気持ち悪いほど、一瞬、動きを止めた気がした。


足元で、割れてしまったカップの破片がさらに粉々に砕け散っている。


リビングから玄関へ続く狭い廊下に、ルイヴィトンのバッグがまるで投げ棄てられたように転がっていた。


果江さんのバッグだ。