恋時雨~恋、ときどき、涙~

「でもね、必ず……が来るから」


わたしは少し身を乗り出した。


果江さんの唇を、うまく読み取れなかった。


メモ帳にボールペンを走らせる。


【ごめんなさい
 もう少しゆっくり】


話してください、と綴ろうとしたわたしの右手を、果江さんは優しい力で掴んだ。


「ごめん。ゆっくり話すから」


と果江さんはゆっくり、大きな口で言い直してくれた。


「あなたと、健ちゃん。今は、うまくいってるかもしれない」


分かる? 、と訊かれて、わたしは頷いた。


「でも、必ず、限界が来るから」


わたしは握っていたボールペンを、床に落としてしまった。


もう、よく分からなくなっていた。


頭が混乱して、心がついていかない。


果江さんが優しい人なのか、意地悪なのか。


味方なのか、同志なのか、敵なのか。


もう、分からなくなっていた。


「あなたを泣かせたくて、本当に憎くてこんなことを言ってるわけじゃないから。でも、きいて」


果江さんは真剣な瞳で、わたしを見つめてきた。


これほどまでに真剣な面持ちの果江さんを前にしているのに、わたしは関係ない事をわざと考えた。