恋時雨~恋、ときどき、涙~

「大丈夫よ。あなたが言われたわけじゃない」


それよりも、あの日の事だけど、と果江さんは続けた。


「大丈夫よ。健ちゃんとは何もなかったから。わたしがあそこを借りて」


と健ちゃんのベッドを指差したあと、


「健ちゃんはあそこで」


とソファーを指差して、


「別々に寝たから」


と果江さんは笑った。


「それに、朝早く亘が迎えに来たから。何もなかった」


わたしは、メモ帳にボールペンを滑らせた。


【そんなことより
 亘さんと仲直りしたの?】


「そんなことより?」


メモ帳を見て、果江さんは呆れた顔をした。


「そんなことで済むの? あなたの心配するところはそこなの? へんな子」


へん?


わたしは首を傾げた。


「わたしと亘のことなんて、どうでもいいことじゃない。女の子なら、ふつう疑わない?」


元彼氏と元彼女が、一晩、同じ空間で一緒に過ごしたのに。


何もなかったと聞いて、疑いもしないの?


嫌じゃないの?


本当は何かあったんじゃないかって、少しも考えないの?