恋時雨~恋、ときどき、涙~

あんなにも苦手なはずだったのに、今日は果江さんが隣に居ても、嫌だとは思わなかった。


果江さんが、わたしの肩を叩いた。


「毎日、こうやって、健ちゃんにご飯作ってるの?」


わたしが頷くと、果江さんは「そう」と少しさみしそうに笑った。


少し、心が痛かった。


それから、わたしはふたり分の紅茶を入れて、リビングへ向かった。


紅茶をテーブルに並べる。


「ありがとう」


果江さんが、柔らかい物腰で会釈をしてくれた。


果江さんと向かい合って、テーブルの前に座った。


ややあって、果江さんが話し始めた。


少し、早口で。


「突然、おしかけて、ごめんなさい」


いいえ、とわたしは首を振った。


ダージリンの香りが、リビングに充満した。


横からはファンヒーターの温かい風が吹いてくる。


「あなたが、誤解していたら大変だと思って」


わたしは息を呑み込んだ。


耳が聴こえない分、わたしは昔からカンがいい方なのだ。


果江さんが何を話そうとしているのか、なんとなく分かった気がした。


きっと、あの日のことなのだろう。