恋時雨~恋、ときどき、涙~

ゆきどけ前の大嵐が、もう目の前にせまっていたことに、わたしは気付くよしもなかった。










4時前にアパートに到着し、軽くリビングを片したあと、わたしは夕食作りに取り掛かった。


少しせまいキッチンに、うららかな西陽が程よく射し込んでいる。


水色のシンプルなエプロンを身に付けて、わたしはメバルを3枚におろし始めた。


引っ越しの時に購入した鍋に、中島くんのレシピ通りに、水、お酒、お砂糖、お醤油を加えて、少しの生姜を入れた。


ガスコンロに火を灯す。


まもなく、甘くてしょっぱくて、少し辛い香りがふわりとキッチンに漂い始めた。


メバルを鍋に入れて、味が良く染み込むように落としぶたをする。


煮込んでいる間に、サラダを作ってしまおう。


冷蔵庫からレタスを取り出した時だった。


キッチンの天井のランプがくるくるまわって、点滅した。


壁時計を見ると、4時35分だった。


静奈と順也に違いない。


ガスコンロの火を止めることも忘れて、わたしは玄関に駆け出した。


下足棚の上のボタンを押すと、ランプの点滅が止まる。