恋時雨~恋、ときどき、涙~

その手紙に添えられていた1枚の写真には、ますます元気な様子のお母さんと、少し疲れた顔のお父さんが写っていた。


3月5日


雪解けが近づく頃の夕方に、その手紙が届いた。


短大のあと、夕飯の買い物をして帰宅したわたしは、キッチンに立ちながらうきうきしていた。


この手紙を早く健ちゃんに見せたい。


やったー! 、とか、よかったんけ、なんて。


きっと、健ちゃんも大喜びしてくれるに違いない。


大きな口で豪快に笑いながら。


こうしちゃいられない。


わたしは気合いを入れて夕食作りに取り掛かった。


今日はお祝いだ。


朝、出掛けに健ちゃんが「肉じゃが食いたい」と言っていたけれど、急遽メニュー変更だ。


お母さんの大好物のカレーライスにしよう。


わたしにとって、カレーライスは特別だった。


テストで80点をとった時、高校受験に合格した日、短大の入学の時。


誕生日も。


何か嬉しいことがあると、必ず、その日の夜はカレーライスだった。