恋時雨~恋、ときどき、涙~

この3日間のあいだに、健ちゃんが設置してくれていたのだ。


「これで、人が来ても分かるんけな。電話とファックスが来ても分かるように、ここにもあるんけ」


そう言って、健ちゃんは電話の横のランプを指差した。


本当に嬉しかった。


健ちゃんは、真剣にわたしと暮らす事を考えてくれていたのだ。


嬉しくて、わたしは健ちゃんに抱きついた。


その反動で、わたしを抱き止めたまま、健ちゃんはソファーに尻餅をついて倒れ込んだ。


〈ごめん!〉


慌てて体を起こそうとしたわたしを、健ちゃんは引っ張った。


健ちゃんの胸に、わたしは倒れ込んだ。


頬に、健ちゃんの鼓動が響いては伝わってくる。


一定のリズムで、優しい感触だ。


心地よくて、わたしは目を閉じた。


健ちゃんが、わたしの髪の毛を撫でた。


そして、指先でわたしの下唇をなぞり、口付けをしてきた。


幸せだと思った。


お揃いの歯ブラシ。


お揃いのマグカップ。


お揃いの食器も。


手を伸ばせばすぐ触れられる距離にいる、大好きな人。


優しい粉雪が降り注いだ冬の日に、わたしの新しい生活が始まった。