恋時雨~恋、ときどき、涙~

「基本だんけ。まず、帰ってきたらする挨拶は? 何?」


わたしはハッとした。


少し緊張しながら、健ちゃんを見つめた。


「今日から、ここが、真央の家だんけな」


嬉しくてたまらなかった。


わたしは、心を込めた手話をした。


〈ただいま〉


健ちゃんが白い歯を見せて笑った。


「お帰り。真央」


わたしは、躊躇することなく、両手を広げた健ちゃんの胸に飛び込んだ。


わたしを抱きすくめたまま、健ちゃんはドアを閉めて壁にもたれ掛かった。


仄かに暗いアパートの玄関で、健ちゃんはわたしの額に軽い口付けをした。











リビングへ上がって、わたしはびっくりした。


わたしの荷物は3日前にこの部屋に運び困れ、片付いている。


すでに、引っ越しは終わっていた。


でも、リビングは3日前の風景と変わっていた。


玄関、リビング、キッチン、浴室。


それぞれに設置された、くるくる回って点滅するランプ。