恋時雨~恋、ときどき、涙~

耳が聴こえないわたしに、必死になって手話を教えてくれたのは、お母さんだった。


手話の勉強が嫌でただをこねて暴れるわたしを、お母さんは何があっても諦めなかった。


「真央、逃げちゃだめよ」


そう言って。


よく、公園に散歩に行った。


お花を摘んで差し出すと、お母さんはいつも「ありがとう」と手話をして、わたしを抱き締めてくれた。


手を伸ばせばすぐそこに、いつでもお母さんがいた。


近所の同い年の子たちにからかわれて泣きながら帰ると、お母さんはいつも特製ホットケーキを焼いてくれた。


ホットケーキには、たっぷりのメープルシロップがかかっていて、甘くておいしくて、それを食べればいつも元気100倍になった。


「真央、負けちゃだめよ! 真央は何も悪いことしてないでしょ」


「お母さんは、いつも、真央のいちばんの味方なんだから」


お母さん。


お母さん、本当に大好き。


神様。


お願い。


お母さんを、元気にしてください。


お母さんとわたしは、ゆっくり、時間をかけて体を離した。