恋時雨~恋、ときどき、涙~

「おれ、いつの間に、真央のことこんなに好きになってたんだろうな」


そう言って、健ちゃんはわたしの唇を親指でそっとなぞった。


わたしは目を閉じた。


健ちゃんの優しくて甘い口付けが、舞い降りた。


その夜、健ちゃんに抱きすくめられながら肩越しに見た月は、とても鮮やかな色のフルムーンだった。


お母さんが泣いているような気がした。


冬のフルムーンに、わたしは誓った。


3年後、わたしはきっと成長していて、笑ってお母さんに〈お帰り〉と言うことを。


お母さんが泣いているような気がした。


だから、心から祈った。


お母さんがとびきりの笑顔で、この町に帰ってくることを。


健ちゃんのぬくもりに包まれながら、わたしは悲しくて切ない夜を過ごした。


とても、寂しくて、でも、穏やかな夜だった。


だから、忘れていたのだ。


もうひとつの問題が残っていることを。


そして、わたしと健ちゃんの未来への道が、もうすぐ何本にも枝分かれしようとしていることも。


わたしたちは、何も気付いていなかった。