恋時雨~恋、ときどき、涙~

お母さんも床に座り込んで、小さく笑った。


「だから言ってるでしょう。大丈夫だって」


診断書を見て、わたしは初めて気付いたのだ。


東京へ行く、とか、ここに残る、だとか。


順也と静奈、健ちゃんと離れたくない、とか。


確かに、それらが不安だったのは間違いじゃない。


でも、わたしがいちばん不安だったのは、お母さんの体の事だったのだ、と。


床に座り込んで、わたしとお母さんは同時に泣いた。


一度も手話を交わさず、泣き続けた。


泣き疲れた時、お母さんがわたしの肩を叩いた。


「3年間、お母さんを待っていてくれないかな。この町で。大切な友達と、大好きな健ちゃんと一緒に」


何とも答えることができなかった。


首を縦に振ることも、横に振ることも。


簡単に出せる答えではなかった。


それでも、お母さんは続けた。


「3年なんて、あっという間よ。精一杯生きていれば、本当にあっという間。必ず、ここに戻って来るから。待っていてくれない?」


ややあって、わたしはお母さんに訊いた。


〈お母さんは平気なの? わたしは寂しい。お母さんは、3年間、寂しくないの?〉