恋時雨~恋、ときどき、涙~

〈違う! そんなこと言ってない!〉


「真央! お母さんは、真央を、愛しているの!」


わたしだって、お母さんを愛している。


〈わたしも、東京へ行く!〉


「だめよ! 短大をちゃんと卒業して、栄養士の資格をとるの!」


〈それは、いつでもできる!〉


「資格をとって、社会に出て、大人になって、幸せな真央の姿をお母さんは見たい!」


息を切らしながら、お母さんは床にぺたりと座り込んだ。


まるで、腰が抜けてしまったように。


苦しそうに、心臓を押さえている。


〈痛いの? 大丈夫?〉


わたしが訊くと、お母さんは何度か深呼吸をして、少し落ちつきを取り戻してから、いつもの穏やかな笑顔になった。


「真央」


お母さんが、わたしの顔を扇いだ。


「突然、こんなことになって、本当にごめんね。いつも、苦しい思いをさせて、ごめんね」


わたしは何度も首を横に振った。


お母さんはゆっくり立ち上がり、リビングから1枚の紙を持ってきた。


病気の診断書だった。


「見て」


胸が痛んだ。


確かに、間違いなく、乳ガンだと記載されてある。