恋時雨~恋、ときどき、涙~

「真央! 残りなさい」


そう大きな口で言って、お母さんはわたしの両手を振りほどいた。


「3年なんてすぐよ。あっという間。手術も成功して、お母さんは必ず治る」


〈でも〉


「その間に、真央は栄養士の資格をとるの。それで、社会に出るの。約束、してちょうだい」


わたしはかっとなった。


〈でも! お父さんとお母さんと離れて暮らすなんて〉


まるで、ケンカだ。


お互いに乱暴な手話で、気持ちをぶつけ合った。


「できる! 真央ならできる!」


〈できないかもしれない!〉


「できる! 順也くんも静奈ちゃんもいる。健ちゃんがいる。真央なら、できる!」


〈お母さん!〉


「順也くんのご両親にもお願いしてある。それに、健ちゃんになら安心して預けられると思ったから。だから、お願いしたのよ」


これほどまでに感情を表すお母さんを、わたしは生まれて初めて見た。


目尻をつり上げて、両手が外れてしまうんじゃないかと心配になるほど、お母さんは激しい手話をした。


「お母さんに、真央の将来を潰せというの?」