恋時雨~恋、ときどき、涙~

「おれは、もう、悩んで答えを出したから。真央と離れたくない。それが、おれの答えだんけ」


そう手話をして、健ちゃんはあっけらかんと笑った。


〈じゃあ、わたしが東京へ行くと決めたら?〉


わたしたちは、もう、終わってしまうのだろうか。


「その時はしょうがねんけ。3年間、真央を待ち続ける」


でも、と手のひらを返す手話をして、健ちゃんは続けた。


「真央がここに残ると決めたら、その時は、責任持って全力で守り抜いてやるんけ。だから、真央がしたいようにすればいい」


わたしは泣き続けた。


涙が、底を尽きることはなかった。


自分のことで精一杯だった。


この時、いちばん辛い思いをしていたのはわたしではなく、おそらく、お母さんだったのに。


車椅子をゆっくり走らせながら、順也がわたしの隣に寄り添うように停まった。


「帰ろう。真央。みんなで、一緒に帰ろう」


トレーニングセンターを出ると、辺りは一面白銀の世界に生まれ変わっていた。


辺りはまばたきをしてしまうほど輝いているのに、わたしは目を伏せてしまった。


オリオン座が、今にも冬の夜空に溶けて消えてしまいそうに輝いていた。