恋時雨~恋、ときどき、涙~

順也がいて、静奈がいる。


見知らぬ土地へ行って、静奈のような女の子に出逢えるなんて、夢のまた夢の話だ。


離れたくない。


静奈の胸の中にしがみついて泣いていると、肩を叩かれ、わたしは振り向いた。


「真央」


わたしの名前を呼んで、健ちゃんが笑っていた。


わたしは健ちゃんに飛び付いた。


〈わたし、どうすればいいのか、分からない。お父さんとお母さんと離れて暮らすなんて、考えたこともない〉


うん、と健ちゃんは頷いた。


「それは分かってるんけ」


〈でも、順也と静奈と……健ちゃんと離れるのも嫌〉


早口のように両手を動かすわたしを、健ちゃんは一度だきすくめた。


健ちゃんの匂いに包まれたわたしの体は、少しだけ熱を帯びた。


わたしの体をそっと話して、健ちゃんは言った。


「ぎりぎりまで悩めばいんけ。悩んで、真央の納得のいく答えを出せばいんけな。誰も、真央を責めたりしない」


分かっている。


そんなことは、分かっている。


みんな、わたしの隣に居てくれる人たちが、誰よりも優しいことを、わたしは知っている。