恋時雨~恋、ときどき、涙~

「でも、真央が東京へ行きたいと言うのなら、無理に止めたりしないよ。けれど、これだけは忘れないで」


順也は、にっこり微笑みながらゆっくりと両手を動かした。


「どこに居ても、真央の居場所は、いつもここに用意してあるからね」


しっかり悩んで、時間の許す限り悩んで、真央の答えを出すといい。


真央が出した答えなら、ぼくはちゃんと受け入れるからね。


そう手話をして、順也はわたしの肩を叩いたあと、体育館の入り口を指差した。


「見て。ふたりとも、追い掛けてきたみたいだね」


入り口には、健ちゃんと静奈が立っていた。


ずっと向こうから、静奈が両手で話し掛けてきた。


「私も、真央と離れたくない。でも、最後に決めるのは真央だから」


わたしは真央の味方だから、と静奈は言った。


わたしは駆け出した。


体育館を全速力で走って、静奈の胸に飛び込んだ。


わたしのたったひとりの親友。


静奈と離れて暮らすなんて、わたしにできるのだろうか。


中学までは別にひとりでも大丈夫だと思っていた。


でも、今は違う。


あの頃とは違う。