恋時雨~恋、ときどき、涙~

順也。


助けて。


わたしを、助けて。


唯一の会話をする手段の手話すらできずに、ただ泣きながら立ち尽くすわたしの右手を引いて、


「邪魔になるから、こっちに来て」


と、順也は体育館の隅に移動した。


コートでは、練習が再開されていた。


涙が止まらなかった。


大粒の涙が床に落ち続ける。


順也の優しい顔さえ、涙で滲んで見えなくなった。


それでも、順也はわたしの手を握って、でも、一切なにも訊いてこない。


それが、順也の優しさだ。


しばらく泣き続けていると、順也がわたしの肩をそっと叩いた。


「懐かしいね」


と順也は、ほんの少し笑いながら手話を続けた。


「昔も、よくこうやって、真央は泣いてばかりいた。そのたびにこうやって、ぼくは真央の手を握り続けたね」


幼い頃のわたしは、今よりもっと、本当に泣いてばかりいた。


耳の事でからかわれたりするとすぐに泣いて、決まって順也のところへ行った。


すると、順也は決まって、何も訊かずにわたしの手を握ってくれた。


あの時も、そうだ。