恋時雨~恋、ときどき、涙~

健ちゃんと一緒に居なさい。


お母さんの優しい手が、そう言った。


順也くんや静奈ちゃんと、離れたくないくせに。


短大だって、あと一年残ってる。


中途半端にするのだけは、お母さん許さない。


努力して、必死に努力して、やっとの思いで入れた学校じゃない。


途中で投げ出すことだけはやめなさい。


そんなことは、言われなくてもじゅうぶん、分かっている。


でも、この時すぐには答えは出せなかった。


お父さんやお母さんと離れて生活するなんて、考えられなかったのだ。


突然、突き付けられた現実と向き合う勇気が、わたしには無かった。


わたしの肩にそっと添えられたお母さんの両手を振り払って、わたしはリビングを飛び出した。


逃げたくて、たまらなくなって、わたしは玄関を飛び出した。


ドアを開けたとたんに、体が一気に冷えきった。


もう、日が沈み始めている。


曖昧な色の雲の隙間から、冷たい雪が舞い降りてくる。


家を飛び出して、上着も着ないまま、わたしは走り出した。


吐く息が白い。