恋時雨~恋、ときどき、涙~

涙で濡れたまま顔を上げると、唇をきつく噛んで鬼のような形相のお母さんと目が合った。


どんぐり眼いっぱいに、たっぷりの涙を溜めていた。


わたしは叩かれた頬を手で押さえながら、お母さんを睨み付けた。


お母さんも負けじと睨み返してくる。


「しっかりしなさい! 真央! 子供じゃないんだから」


大粒の涙が、わたしの目から止めどなくこぼれていく。


全ての感情を洗い出すように、止めどなく。


わたしは、泣きながら両手を動かした。


指先がかじかむ。


〈お母さん……死んじゃうの?〉


体が、恐怖で震えた。


〈わたし……どうすればいいの?〉


そう手話をして、わたしはカーペットに座り込んだ。


お母さんは優しく笑いながら、わたしを抱き締めた。


「バカね。死ぬわけない。治すために、専門の先生が居る病院に行くの」


〈でも〉


わたしが両手を動かそうとした時、お母さんが真剣な顔をした。


お母さんの両手が、ゆっくりと訴える。


「だから、真央は、ここに残りなさい」