恋時雨~恋、ときどき、涙~

目の奥が尋常ではないほどに、ぐるぐる回って気持ち悪ささえ覚える。


わたしは、お母さんを見つめた。


でも、お母さんはひたすらにうつ向いたままで、顔を上げようとはしなかった。


小さな肩をもっと小さくすくめて、うつ向いている。


お父さんが言った。


「来月には、東京へ行かなければいけない。もちろん、お母さんも行くよ」


心臓が脈を打った。


窮地に追い込まれる。


選択肢は、ふたつ。


短大を諦める、あるいは休学して、わたしも2人についていく。


それとも、ここへ残って、短大を卒業して3年後を待つか。


窮地に追い込まれたわたしに、更なる追い打ちをかけたのはお父さんの一言だった。


「お母さんが、東京の病院に入院することになったんだ」


愕然とした。


「お母さんは、病気なんだ。乳ガンなんだよ」


ウソ。


その時、わたしの中に生まれた感情は悲しみでもなければ、落胆でもなかった。


わたしは、お父さんを睨んだ。


そんなことを突然つげられて、信じられるものか。


バカ。